『人生のレールを外れる衝動のみつけかた (ちくまプリマー新書 453)』
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「本当にやりたいこと」「将来の夢」「なりたい自分」こんなテンプレに惑わされないために。
変化を恐れない勇気、あげます。
「将来の夢」や「本当にやりたいこと」を聞かれたとき、
それっぽい答えを言ってやり過ごしたことはないですか?
自分を忘れるほど夢中になれる「なにか」を探すために
スマホを置いて一歩を踏み出そう。
【本書に登場する話題】
魚豊『チ。』/山田鐘人・アベツカサ『葬送のフリーレン』/伏瀬『転生したらスライムだった件』/山口つばさ『ブルーピリオド』/屋久ユウキ『弱キャラ友崎くん』/香山哲(漫画家)/黒澤明/ドストエフスキー/ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』/ジョージ・ソーンダーズ(作家)/ジェニー・ホルツァー(現代アーティスト)/空揚げの無料配布/幽霊文化/マーク・フィッシャー/キルケゴール/フロイト/チャールズ・テイラー/プラグマティズム/宇野常寛/小川公代/鶴見俊輔/森田真生/けんすう『物語思考』/ダニエル・ピンク『モチベーション3・0』/クレイトン・クリステンセン『イノベーション・オブ・ライフ』/スタンフォード式 人生デザイン講座/「本当にやりたいこと」/キャリアデザイン/OODAループ/言語化/観察
【目次】
序 章 なぜ衝動は幽霊に似ているのか
「自分ではもうコントロールしきれないくらいの情熱」 / 魚豊『チ。』のストーリー /
要領のよさの反対にあるもの / 「え? なんでそんなことを、そんな熱量で?」と思われること /
衝動に気づくことの難しさ / 衝動は「幽霊」のように憑く /
「将来の夢」は、世間の正解をなぞる語り / 「本当にやりたいこと」という言葉遣いを避けた方がいい /
衝動はすべてを脇に置いて、その活動に取り組ませる
第一章 衝動は何ではないか
ダニエル・ピンクの『モチベーション3・0』 / 三種類のモチベーション /
インセンティヴと内発的動機づけ / 衝動は、モチベーションの言葉遣いでは説明できない /
対価をもらわずに空揚げを作って配る人の話 / 「なぜ空揚げを作るのか」に関する、本人による説明 /
衝動は、説明から常に零れ落ちる / 衝動は、自分でも驚くような行動をもたらす /
衝動には、極端な持続性がある / ジークムント・フロイトの欲動論/衝動についてこれまでわかったこと
コラム 否定神学、他人指向型、『葬送のフリーレン』
第二章 衝動とは結局何ものなのか
衝動に積極的な定義を与える / 欲望の「強さ」に目を奪われるな/深い欲望の性質 /
自分の深い欲望はわからないのが常態 / 強さを基準に衝動を把握しないこと /
型破りな人を研究する「ダークホース・プロジェクト」 / 偏愛は抽象的に捉えてはいけない /
偏愛を解釈した先に衝動が見えてくる / 偏愛は細かく詳しく言葉にすべき /
SNSと偏愛の相性の悪さ / 自分が何を楽しんでいるかを解釈する必要性 /
衝動は唯一の生き方を定めるわけではない / 衝動についてこれまでわかったこと
コラム 言語化のサンクコスト
第三章 どうすれば衝動が見つかるのか
偏愛から衝動へ降りていく方法 / セルフインタビューで偏愛の解像度を上げる /
考えや思いを控えないように、自分を丁重に扱いながらインタビューする /
自分を粗末に扱わないためのいくつかのテクニック / 違和感や不快感から捜査をはじめる /
「物語」でなく「細部」に注目する / 黒澤明「生きる」の記憶を再解釈する① /
黒澤明「生きる」の記憶を再解釈する②/感性を再起動する二つの方法 /
欲望の発見術としての欠乏 ― 宇野常寛さんの方法 /
「それっぽい言葉」は支えにならない ― 鶴見俊輔さんの方法① /
「紅茶を飲むためなら世界が破滅しても構わない」 ― 鶴見俊輔さんの方法② /
ドストエフスキーの爽やかな衝動 ― 鶴見俊輔さんの方法③ /
感じる力を取り戻すためのニヒリズム ― 鶴見俊輔さんの方法④ / 衝動についてこれまでわかったこと
コラム 「それっぽい説明」から逃れるには
第四章 どのようにして衝動を生活に実装するのか
心理学者ジョン・デューイと、「衝動」の考察 / 他者の目的にやみくもに従うことの問題性 /
衝動にやみくもに従うことの問題性 / 衝動と知性の関係 /
知性で衝動に働きかけることで、目的は形作られる / ①環境を観察すること /
②記憶を探索すること / ③意味を判断すること / 衝動は目的や戦略へと翻訳される /
衝動の力が続く限り、目的や戦略は成長していく / 衝動は、行動を再構築する /
衝動には「溜め」がある / 衝動がもたらす自己変容の体験 / 衝動についてこれまでわかったこと
コラム 観察力の重要性 ― 絵画観察のワークショップからOODAループまで
第五章 衝動にとって計画性とは何か
衝動に基づく生き方は何が違うのか / 本書の考えとキャリアデザインは何が違うのか /
キャリアデザインという考え方の性質 / 衝動は計画性をどう取り込むのか /
自分の偏りや特性に基づいた計画性 / リスクとは、自分の個人的な偏りに適合しない生き方のこと /
実験的に試行錯誤するという計画性 / 衝動についてこれまでわかったこと
コラム 社会的成功と結びつけない
第六章 どうすれば衝動が自己に取り憑くのか
自分を「感じやすいメディア」にする方法/感じるのを控える現代人 /
クリステンセン『イノベーション・オブ・ライフ』の見方 /
クリステンセンの議論が持つ〈内向きの流れ〉 / 自分の内側と外側が浸透し合うという視点 /
緩衝材に覆われた自己と、多孔的な自己 / 自己が感じやすいメディアになることのマイナス面 /
ちょっとした行動で「善なるものを招き入れる」 / 実験が感受性を起動させる /
目の前のものに誘惑される力 / ライブで体験しなければ意味がないのか問題 /
自分を過去に同期させよ ― キルケゴールの聖書読解/物語へのジャックイン /
〈瞬間〉へのジャックイン / 衝動についてこれまでわかったこと
コラム 衝動の善悪を線引きすることはできるか
終 章 衝動のプラグマティズム、あるいは実験の楽しみ
マルチタスキングで「寂しさ」を埋める / 刺激やおしゃべりに薄い注目しか向けない /
「寂しさ」が導くルートと「衝動」が導くルート / 生活の中心を、〈趣味〉の楽しさに置くこと /
プラグマティズム、あるいは実験の楽しみ
大切なのは、成否ではなく実験することそのものです。自分の感受性は、心惹かれている人や事柄に対して小さなアクションを起こすことによって初めて目を覚まします
逆に言うと、「答え」を「わかりやすく」伝える本は、実験の必要性を減少させ、当人の感受性を抑制する性質を持ってしまう。